熊本地震後の創造的復興、中小企業の事業継続を県が支える意味

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ニュースの概要

熊本県は熊本地震からの復興を次の段階へ進める「新たな創造的復興」プランをまとめた。元の姿に戻すだけでなく、災害に強い地域へつくり替える考え方である。柱の一つが中小企業の事業継続計画(BCP)への支援で、県を防災先進県へ押し上げる狙いがある。地震では熊本に集積する半導体や自動車関連の工場が止まり、部品の供給を通じて全国の生産にも影響が及んだ。地域の中小企業が被災しても早く立ち直れる仕組みを、行政が前面に出て整える方針だ。

引用元: 熊本地震、「新たな創造的復興」プラン 防災先進県へ中小BCP支援(日本経済新聞)

分析・見解

「元に戻す復興」から「強くなって戻る復興」への転換

創造的復興という言葉は、阪神・淡路大震災の後に広まった。壊れたものを元通りにするだけでなく、前より強い地域をつくる考え方である。熊本のプランがこの言葉をあらためて掲げたのは、地震から年月がたち、道路や建物の復旧が進んだ一方で、企業の体力に差が残ったためとみられる。

公共インフラは行政が直せる。しかし、取引先を失った会社や、設備を直す資金が尽きた会社は、行政の復旧計画の外に置かれやすい。今回、支援の中心に中小企業のBCPを据えたのは、その空白を埋める意図があると読める。

熊本が全国の工場とつながっていたという教訓

熊本地震では、県内の半導体工場や自動車部品工場が止まった。そのため、遠く離れた組み立て工場にも影響が広がった。東日本大震災でも、車載用マイコンの工場が止まり、世界の自動車生産が数週間にわたり揺らいだ。災害の被害は、被災地の中だけでは終わらない。

ここで見落とされがちなのは、止まった大手工場の下に、何層もの中小の部品加工会社がぶら下がっている点である。大手は予備の調達先を持っていても、二次、三次の取引先が一社で止まれば、全体の復旧が遅れる。つまり中小のBCPは、地域のためだけでなく、取引先全体の保険でもある。

紙の計画で終わらせないために必要な三つの支え

BCPは、作っただけでは役に立たない。中小企業庁の調査でも、策定済みの企業は大企業に比べて少なく、策定済みでも訓練をしていない例が目立つ。社長が一人で抱える知識を文書にし、社員が動けるようにする作業は、日常業務に追われる小さな会社には重い。

支援が実効性を持つには、少なくとも三つの要素がいる。第一に、専門家が現場に入って一緒に作る伴走である。第二に、非常用電源や設備の固定、データの外部保管といった投資への補助である。第三に、策定後の訓練や見直しを続ける仕組みである。県が補助金を出すだけでは、第一と第三が抜けてしまう。

防災先進県という看板が地域にもたらす競争力

防災先進県を名乗ることは、安全の宣伝にとどまらない。工場を新設する企業にとって、地震リスクのある土地は敬遠材料になる。そこで、被災した経験を持ち、企業の備えも整っている地域だと示せれば、立地選びで逆に強みになる。

台湾の半導体産業は、地震や停電への備えを徹底することで供給の信頼を築いてきた。熊本が半導体の集積地として成長を続けるなら、同じ信頼を示せるかどうかが問われる。BCP支援は、防災であると同時に、産業政策でもある。

ビジネスへの影響

取引先から備えの有無を問われる時代に入る

発注する側の大手企業は、取引先の事業継続体制を確認する動きを強めている。BCPの策定状況が取引条件に入ることは、今後さらに増えるだろう。熊本のように県が支援を用意する地域では、自社だけが遅れると目立つ。補助や専門家派遣の窓口を一度調べ、使える制度があれば早めに申し込むとよい。

小さく始めて、三つの問いに答えられる状態をつくる

最初から立派な計画書を作る必要はない。次の三つに答えられれば、最初の一歩になる。止まると困る業務はどれか。それを何日以内に再開したいか。そのために、誰が何を持って動くか。

あわせて、顧客データと図面の保管場所を二か所に分ける、重要設備を固定する、主要な取引先と災害時の連絡方法を決めておく、といった低コストの対策から着手できる。公的な補助を使える場合は、その申請書づくりが、計画を整理する良い機会にもなる。

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