サイバー攻撃の防災訓練が示す、復旧を実地で試す時代
ニュースの概要
レック・テクノロジー・コンサルティングが、「サイバー攻撃の防災訓練」と名付けたサービスの提供を始めた。特徴は、攻撃を受けた後の復旧作業を、机上の想定ではなく実際の環境で試せる点にある。バックアップからの復元、システムの切り戻し、関係者への連絡といった一連の動きを、本番に近い条件で確認できる。侵入を防ぐ対策から、被害を受けても早く立て直す対策へと、企業の関心が移っていることを映す動きだ。
引用元: レック・テクノロジー・コンサルティング、「サイバー攻撃の防災訓練」を提供開始 復旧の実地テストが可能(EnterpriseZine)
分析・見解
机上訓練では見えない、復旧手順の抜け穴
多くの企業には、インシデント対応計画が存在する。だが、その大半は文書の上で完結している。実際にバックアップから戻そうとして初めて、データが壊れていた、復元に想定の数倍の時間がかかった、という事態が起きる。
防災訓練という呼び方は的確だ。避難経路は紙で確認しても、実際に歩かなければ非常口が塞がれていることに気づけない。復旧も同じである。
防ぐ対策から、立て直す対策へ重心が動いている
ランサムウェア(=データを暗号化して身代金を要求する攻撃)の被害は、国内でも毎年数百件規模で報告されている。侵入をゼロにするのは現実的ではない。そこで問われるのが、止まってから何日で戻せるかである。
2024年の大手出版・動画関連企業の被害では、主要サービスの停止が長期化し、復旧の遅れが事業そのものを揺さぶった。この種の事例が、経営層の関心を「入れない」から「戻せる」へ引き寄せた。
実地テストが難しかった本当の理由
復旧を本番環境で試すのは、これまで敬遠されてきた。訓練中に実際の業務を止めるおそれがあるからだ。外部の専門会社が、隔離した環境や段階的な手順を用意して代行する意義はここにある。
自社だけで挑むと、担当者の善意と経験に頼りがちだ。第三者が進行役を担えば、誰が何を判断するかという、人の動きの穴まで見える。
復旧時間の数字が、経営の共通言語になる
実地テストの最大の成果は、報告書の指摘よりも、実測した復旧時間という数字が手に入ることだ。数字があれば、許容できる停止時間と現実との差が明確になり、投資の議論が具体的になる。
ただし、一度の訓練で安心するのは危うい。システムは日々変わる。訓練は年に一度の行事でなく、構成変更のたびに見直す習慣にして初めて効く。
ビジネスへの影響
まず自社の重要システムを三つに絞って測る
全システムを一度に試す必要はない。売上に直結するもの、顧客データを持つもの、止まると他部門が動けなくなるものの三つに絞り、それぞれの目標復旧時間を決める。そのうえで、実際にどれだけかかるかを測る。差が大きいところから手当てすればよい。
技術部門だけで完結させない訓練設計にする
本当に詰まるのは、技術よりも判断の場面である。いつ取引先へ知らせるか、いつ警察や監督官庁へ報告するか、誰が停止を決断するか。経営者、広報、法務を巻き込み、判断の順番まで試すことが重要だ。
費用面では、実際の被害額と比べて考えたい。数日の停止で失う売上や信用を見積もれば、訓練の費用は保険料に近い位置づけになる。サイバー保険の条件や、取引先への説明材料として使える点も見逃せない。